『トラッカー:インディアンの聖なるサバイバル術』感想文

魂の生き方・自然と調和

――「見る」ということの本当の意味を教えてくれる、魂に響く一冊

本書を読み終えたとき、しばらくの間ページを閉じることができませんでした。胸の奥にじんわりと残る感動と、読了後に「何かが変わった」という確かな感覚があったからです。

『トラッカー:インディアンの聖なるサバイバル術』というタイトルを目にされた際、多くの方がアウトドアやサバイバルの実用書を連想されるかもしれません。もちろん、本書にはそのような要素も含まれておりますが、実際にはもっと深く、本質的なテーマが描かれています。
それは「自然と共に生きる精神」、そして現代社会の中で忘れかけている“感覚”を取り戻すための導きです。

著者であるトム・ブラウン・ジュニア氏は、幼い頃に出会った先住民の長老ストーキング・ウルフ、通称グランドファーザーから、追跡術(トラッキング)やサバイバルスキル、さらにはスピリチュアルな叡智を受け継いだ人物です。
グランドファーザーは単なる知識人ではなく、自然と深くつながり、宇宙の理(ことわり)を読み取る“聖なる存在”として描かれております。

彼の教えは、木の枝や足跡を読むといった表面的な技術ではなく、風の音、鳥の沈黙、光の揺らぎといった“目に見えない声”に耳を澄ませるという、極めて感性的で深い学びでした。

本書を通して、私は幾度となく驚かされました。たとえば、動物の心を感じ取ることができるという話や、森の“気配”から人の足跡の先を読み取るという描写など、にわかには信じがたい内容もありますが、それが実際に著者自身の体験として語られていることで、不思議と説得力をもって伝わってきます。

特に心に残ったのは、「追跡とは獲物を追うことではなく、宇宙の流れを感じることだ」というグランドファーザーの言葉でした。
現代を生きる私たちは、多くの情報や物を求め、忙しなく過ごしていますが、本当に大切なのは“感じること”、そして“つながること”なのだと、この本を通して深く実感いたしました。

また、本書にはスピリチュアルな要素だけでなく、サバイバル技術としてのリアリズムや自然への畏敬の念も描かれています。
野営の方法や火の起こし方、食料の確保など、現代では忘れられがちな“生きる知恵”が、精神的な学びと密接に結びついている点も本書の大きな魅力です。

読み進めるうちに、私自身の感覚も少しずつ変化していくのを感じました。
風の音や鳥のさえずり、あるいは街の中の“気配”にまで、自然と注意が向くようになったのです。私たちはいつの間にか、“見ているようで何も見ていない”存在になってしまったのかもしれません。

本書は、単なる読み物ではなく、読者の魂に働きかける“体験”のような作品です。そして、私たち一人ひとりの中に眠る“自然とのつながり”を目覚めさせるための鍵でもあります。
グランドファーザーの教えは、インディアンの叡智という枠を超えて、すべての現代人にとって普遍的な価値を持つ「本質」を伝えているように感じました。

都会で暮らしていても、山にこもることがなくても、この本の教えは必ず心に響くことでしょう。なぜなら、自然とは決して外にだけあるものではなく、私たちの内側にも脈々と流れているものだからです。

もし今の生活の中で、「何かが足りない」と感じていらっしゃるなら、この本はきっと、人生に静かで確かな変化をもたらしてくれるはずです。
ページをめくるたびに、自分自身の奥深くから、何かが目覚めていくような感覚をぜひ味わっていただきたいと思います。

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