エンリケ・バリオスの著書『まほう色の瞳』を読み終えたとき、私はしばらく静かに目を閉じていました。言葉にするのがもったいないような、美しい余韻に包まれていたのです。
本書は、彼の代表作である『アミ 小さな宇宙人』と同じように、ファンタジーの世界を通じて私たち人間に「大切なこと」を優しく、けれど深く問いかけてくれます。登場人物は若く、物語はやさしい言葉でつづられていますが、その奥に流れるメッセージは、子ども向けの枠をはるかに超えて、大人の心にもまっすぐ届く力を持っています。
タイトルにもある「まほう色の瞳」とは、単なる不思議な目の色ではありません。それは「見えないものを見る力」を象徴しているように感じました。つまり、愛、真実、美しさ、魂といった、目に見えないけれど確かに存在する“本質”を見抜く視点のことです。
物語を通じて描かれるのは、「恐れ」や「支配」ではなく、「愛」と「自由」と「つながり」によって世界を創っていくというビジョンです。この本に出てくるキャラクターたちは、決して完璧ではありません。でもだからこそ、彼らの変化や気づきが私たち自身の姿と重なって見えてくるのです。
特に印象に残ったのは、登場人物たちが「心で感じること」「魂で理解すること」を少しずつ学んでいく場面でした。現代の私たちは、どうしても頭で物事を考え、損得や効率で判断してしまいがちです。でも本書は、それとはまったく逆の方向──つまり「心で選び、魂で生きる」ことの素晴らしさを、静かに教えてくれるのです。
読んでいる途中、ふと自分の子どもの頃の感覚を思い出しました。空が美しいと感じたり、誰かの悲しみに本気で涙を流したり、何かをただ「大好き!」と思うだけで幸せだった、あの頃の自分。大人になるにつれて忘れてしまったそうした感覚が、この本を通じて少しずつよみがえってきたのです。
また、本書のメッセージは決して「こうしなさい」と押しつけるものではありません。それぞれの読者が、自分の内側にある「ほんとうの答え」を見つけることを静かに促してくれるような、そんな包み込むようなやさしさに満ちています。
エンリケ・バリオスの作品には一貫して「宇宙的な愛」のテーマが流れていると感じます。この『まほう色の瞳』もまた、「宇宙」や「高次の存在」とのつながりを感じさせる場面が随所にあり、人間という存在がいかに壮大な宇宙の一部であるかを思い出させてくれました。
スピリチュアルに関心がある方はもちろん、日々の忙しさや不安の中で「本当の自分」を見失いかけている方にも、この本はきっと静かな灯りをともしてくれるはずです。
読み終わった後、私は自分の生活のひとつひとつをもう少し丁寧に、大切に扱いたいと思いました。そして、目の前にいる人を、もっと「まほう色の瞳」で見つめてみたい──そんな気持ちが自然と湧いてきたのです。
この物語に出会えたことに、心から感謝したいと思います。
『まほう色の瞳』(エンリケ・バリオス 著)
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